理想のコミュニケーションは、自分と相手にとって必要なものを必要な分だけ伝えられること。
でも実際は報告や連絡・プレゼンなどで言いたいことがうまく伝わらないこと、よくありますよね。
伝わらないのは、あなたが難しいことを言っているからです。さらに、難しさは深さと複雑さの 2種類に分けられます。
内容が浅いものや単純なことは伝え方が悪くても伝わりますが、内容が深く複雑なものほど伝わりにくくなってしまいます。
この部分を伝えたいとき、どうすればうまく伝わるのでしょうか?
この記事では、内容が深く複雑なものをシンプルに伝える方法を、できるだけシンプルにお伝えしたいと思います。
情報の深さと複雑さはトレードオフ
つまり深い情報になるほど、複雑で分かりにくくなるということです。
図解します。
第2〜第4象限にかけて、知識が深くなる一方、複雑さは増していきます。
例えば『バンド』を例に考えます。
バンドという言葉には、音楽・輪っか・職位など色んな意味があります。
音楽のバンドをもっともシンプルに表現すると、『音楽を演奏する人の集まり』ですかね。
そこからメンバーの人数、ギター・ベースなどの楽器、有名なバンドの名前、というように少しずつ情報が深くなっていきます。
インディーズのバンドや海外のバンド、CDを出していない無名のバンドなどなど・・・。
ここまでくるとほとんどの人は知らない領域、すなわちマニアの領域です。
このように、知識が深くなるほど、その知識は複雑になり、分かりにくくなります。
そして、このトレードオフ構造に気づいていないことがコミュニケーションミスを引き起こすのです。
相手より自分の方が詳しい場合、詳しい領域で話をしてしまうと、相手に何も伝わらず自己満足で終わってしまうケースはよくありますよね。
例えば、後輩からの相談に対し武勇伝を語ってしまったり、話を聞いてほしいだけなのに正論を返されたり。
そうならないためにも、まずは内容の深さと複雑さのトレードオフ構造を把握してください。
自分と相手の脳内は同じではない
この世に全く同じ人はいません。
自分と相手は違う人であり、もちろん知っていることや考えることも違います。
一見当たり前のことですが、誰かとコミュニケーションを取るとき、私たちはこのことを本当によく忘れてしまいます。
そして、これは言わなくても分かってくれるだろう、こう言えば伝わるだろうと思うものの、結局伝わらなかった経験、ありませんか。
例① 「お鍋にするからお肉買ってきて」と夫に頼んだが、鶏肉を買ってきた。いつもうちのお鍋は豚肉なのに。
例② 「明日のプレゼン資料、1枚で簡単にまとめて」と部下に依頼したところ、文字とグラフがぎっしり詰め込まれた 1枚があがってきた。パッと見てわかるシンプルな資料を期待していたのに。
これらのコミュニケーションミスは、自分と相手の差を無視して、自分のなかの当たり前を押し付けてしまうことが原因です。
自分と相手の脳内は別物なのです。
相手の理解度に合わせて、シンプルに伝える
- 内容の深さと複雑さのトレードオフ構造
- 自分と相手の脳内は別物
以上 2つの前提をふまえると、分かりやすく伝えるためにはどうすればいいのでしょうか。
自分が持っている情報の深さにかかわらず、相手のレベルに合わせた表現にする、つまり情報が深く、かつシンプルな領域 (第1象限) で伝えることに最も価値があるのです。
冒頭のマトリックス図で説明します。
第2〜第4象限がトレードオフ構造です。4象限の深い情報(マニア)を複雑なままで伝えても、理解できる人はほとんどいません。
そこで、情報の深さはそのままに、シンプルに伝えてみましょう。
具体的には、
① 共通の話題からはじめる
② はい/いいえで答えられる質問をする
のどちらかがおすすめです。
例えば、第4象限(たとえばマニアックなバンドの話)にもっていきたい場合、
① 共通の話題
Apple Music みたいな、音楽聴き放題サービスって流行ってるよね。今までだとあまり聞いたことがないバンドの曲って手に取りにくかったんだけど、これだと定額だから無名のバンドも探しやすいんだよね。それで最近見つけた良い感じのバンドがあってね・・・。
② はい/いいえの質問
今日電車で音楽聴いた?
好きなバンドある?
このように、相手がすぐ反応できるシンプルなレベルから話しはじめることで、深い知識や考えまで相手を連れてくることができるのです。
このアプローチを活用しているもっとも身近な例が、テレビCMです。
なにが言いたいのかよく分からないけれど印象に残る CM ってありますよね。
例① 消臭力(エステー)
商品の性能よりも商品名に特化して伝えています。
直接、免許をとりましょうと呼びかけて伝わるなら、CM は必要ないですよね?キャラクターとストーリーをうまく使って、免許や車の良さを伝えています。
このように CM は、興味がない、よく分からない商品やサービスを、タレントやキャラクターという有名人を通してシンプルなレベルに変換して伝えることによって、興味を持ってもらおうというコミュニケーションなのです。
同じく格言やキャッチコピーも情報が深く、かつシンプルな領域(第1象限)にあたります。
例① 人間だもの。(みつを)
例② 人民の、人民による、人民のための政治(リンカーン)
例③ お口の恋人(ロッテ)
このように深い情報こそシンプルなものに置き換えて、相手の理解の間口をひろげるようにすれば、伝わります。
まとめ
難しいことを分かりやすく伝えるときには、
- 相手の理解度に合わせて
- 深い知識をシンプルに伝える
ことを心がけてください。